1.卒業制作について
__まず、卒業制作についてお聞きします。
家に植わっているキウイの木を描こうと思っています。3回生の夏くらいにも一度描いたんですが、あんまり自分の中で上手くいかなくって・・・
それで、まあまあこれも経験やしって置いてたんですが、卒制何描こうってなった時に、モチーフを学校の周りも探したけれど、あんま無いなあって思いながら家に帰って、家の周りでも探した時に、また「あ、やっぱキウイの木ええな」と(笑)
リベンジしようと思って描くんじゃなくって、もう一回気になっちゃったから「じゃあいまだったら描けるかな」って。1年経ったし、消化したい気持ちで、いまちょっとやってみようかなって、始めたとこです。
__今回日展に出された作品は風景でしたが、北川さんは風景を描くことが多いですか?
植物とかを描くことが最初は多くて、ずっとその有機的な植物の形とかを描いていました。
去年の制作展の作品も、植物園に行って色んなところを探索して見つけたモチーフです。
結構植物が好きだったんですが、最近はなんか風景というか、ちょっと植物じゃないものでも形が面白かったりだとか、リズムがあるものとかに興味を持ち始めました。でもまた今回の制作展では植物描こうかなって。
2.作品を作る時のこだわり
__作品を作るときのこだわりや、悩んだところはありますか?
結構これまでは、画材を使いこなすこと自体が難しくて、作品の下図描いたりスケッチしたりとかいう段階は楽しくできるんだけど、そこから色が入ってくる、筆を使うってなった時につまってて、うわどうしようって試行錯誤をずっとって感じでした。
最近それもやっと、今までは使いこなすのが難しいなって思って悩んでやってたけどちょっとそれが解消されてきて、また次、その画面の中でどうやって描いていこうとか違う悩みができるようになってきてよかったなと思っています。
形への興味やいいなと思ったところをちゃんと拾って、それを取り逃がさずに描いていくことは結構こだわってやってるところかな。
__日本画のどういったところが難しいと感じますか?
技術的なことになるんですが、日本画は色を置いてくのが難しくて、膠というものを糊代わりみたいにして、顔料をくっつけて描いていくんですが、その膠の濃度とか顔料の重ねていき方で、取れやすくなったりしっかり定着したりというのが結構変わってきます。
だから、2回生のとき描いた絵とか、初期に描いた作品の画面サラサラって触ると、なんかもうふぁ〜って顔料が落ちてきたりして(笑)
そんな触ったことのない画材に慣れなあかんのが、まず一番最初に悩むところなんかなと思います。なかなか思うように描けないんです、今もまだ色々発見があるぐらい。
言葉で教えてもらってもよくわからないし、本当に、やってるうちに掴めてきたり、感覚でわかってきたりとか、枚数を描いてやっと慣れてきたなというところです。
だからたぶん人それぞれやり方があって、画材も色々種類があるので、膠とかも定着力が弱いのとか粘りが強いものとか、自分の絵に合わせていろんなの使ってる人もいます。
__たしかに日本画は材料にこだわる人が多いイメージがあります。北川さんがこだわってるものはありますか?
私は結構、色を何度も重ねて描いていくこともあって、その描き方も絵を描くごとに探ってる感じなんですけど、一個一個の画材に対するこだわりというか、この墨!この顔料が!とかいうのはあんまりないんですが、色とか、自分のいい色になるように重ねて持っていくとかっていうのはずっとこだわってやっている感じです。
思い通りにすっと描けない分、画面の上で色を重ねたり洗ったりして考えていくのが面白いんだと思います。
3.学内展について
__昨年度から作品展の会場が京都市立美術館から学内になりましたが、どうですか?
やっぱり私的には、美術館で展示したい!笑
美術館で展示となると来てもらえる範囲も増えるし、大きいところに飾られる作品を作るっていうのも良い経験になるし。普通は公募展に通らないと美術館で飾ってもらえることはないので、すごくいい機会だったんだなと思います。
大学での展示も、普段制作してる場所に飾るのは面白いなと。でも作品を見てもらってこそなので、日本画はアトリエ棟の1番上の階だしみんながちゃんと辿り着いてくれるか少し心配ではあります・・・笑
__今年度と昨年度で変わるところなどはありますか?
昨年度は1・2・3の各研究室ができるだけわかるように分けて展示していたのですが、今年度はちょっとごちゃ混ぜになる予定です。展示スペースの関係でそうならざるを得ないのですが、1つの日本画っていう中にこれだけいろんな作品があるよっていうのが見てもらえたら、また別の面白さを感じてもらえると思います。
__各研究室にはどのような違いがあるんですか?
研究室1は昔の技法を学んで、模写をする人もいればそれを活かして自分の作品を作る人もいたり、古典的な勉強ができます。
私がいる研究室2が今まで続いて来た日本画の形を使って、それこそ外に出て写生して、それを持って帰って来て自分の作品に出力していくというプロセスを意識してやっている人が多いゼミです。
研究室3では今までの日本画も勉強しながら、これから先の日本画とはみたいな。
だから研究室3では、抽象描いてる人がいたりとか結構自分でコンセプトがあって、それを日本画というものを使って描いていくという人がいたりします。
でも結局のところは、どこにいても自分の制作はできるから、この研究室に来たからこういう風にしないといけない、みたいなことはないし、自分次第でどうにでもできちゃいますね。
4.京芸の日本画専攻に入ったきっかけ
__高校の時はハンドボール部だったとお聞きしました。そこから京芸に進学して、さらに日本画を学ぼうと思ったきっかけなどはありますか?
高1の時に進路調査で志望校を聞かれた時に、親が卒業生だったこともあり、いろいろと詳しく知っている大学が京芸でした。
その時にやりたいこと、というかできることとして、絵を描くのは好きだし、どっちかというと得意だとも思っていたので、今行きたいと感じるのはここだなと第一志望に決めましたね。
日本画にしたのは、それも母親の方が日本画をやってたのは一つの要因ではあると思うんですが、高3の時に部活を引退して画塾に行きだした時にデッサンはずっと好きだったから、まあデッサンが一番活かせるのって日本画なんだろうなと考えました。一番好きになることができるのは日本画かなと思って、画材も綺麗だし。結構こうふわっと決めた感じがします。
5.制作について
__1作品にかける時間はどれくらいですか北?川さんだとやっぱり写生の時間が多い?
前に大きい作品を描こうと思った時は、やっぱり大きいの作品を描くときには資料がないと描けへんしと思ったので写生をできるとこまでやりました。でもやっぱり大きい作品は本描きに入ってからも時間がかかるから、3ヶ月ちょっとくらいかな。制作期間は作品によってサイズとか、どんなモチーフで描くかとかによっても変わるかなあ。
制作展の制作はじめてるけど、それも大きい作品やから写生けっこうしないとこれは描ききれないなって思って、今必死です(笑)午後4時くらいには凍えて描けなくなっちゃうからそれまでにできるだけ昼間のあったかいうちに外に出て、描けるだけ描いて帰って、ヒーターの前で温まって・・・みたいなのを最近はやっています。
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__これ(画像5枚目参照)は日展に出展した作品のための下書きですか?
そうです。これ(大きな下書き)を全部コンビニに持って行って縮小コピーして、それをつなぎ合わせて、また印刷して、もう一回小さいのにして構成を考える。
この中で大きい画面になった時のことを考えて、この辺ちょっとこんなにいらんなとかトーン落としたいなって思ったら、別の紙を貼ったりしてこんな感じにしよって見てみたりとか割とアナログなことをしています(笑)
今まではスケッチしたのをそのまま絵にしたりしてたけど、これをやっておけば描きだした時にあんまり困ることがないなって気づきました。
面白かったのが、下書きを縮小コピーした時にマスキングテープが写りこんで、「あ、これけっこういいやん!」って実際の本紙にも描きました(笑)
__そんな偶然が!
最近は実際の場所をその通りに描くんじゃなくて、ちょっと面白がって自分でいろいろやってみてもいいんやっていうのを思いはじめました。だから今までけっこう悩んでいたぶん、割と楽しんで描けるようになってきたかな。
けっこう計画立ててやってるような感じになってるけど、最終的には絵の中でどう見えてるかっていうのをずっと意識していて、それが予定していたことと違っても画面上でいいように作用してたら残してあげるようにしています。
6.制作のお供など
__制作をするときの「おとも」などはありますか?これまでインタビューした方は食べ物飲み物が多いのですが・・・
私もやっぱりお菓子食べてることが多いです(笑)チョコとかずっと食べてるかも。
夏も日展に出展する作品を描くのにけっこう制作室に来てたのですが、制作室の冷蔵庫でチョコ冷やして途中途中でめちゃめちゃ食べてました(笑)絶対なんか甘いものは食べてる気がする。
__やっと作品を描くのが楽しくなってきたとのことですが、これからどんな日本画を描いていきたいですか?
私は外に出てスケッチして、自分でいいなと思ったものをちゃんと自分の作品にしていけたらいいなと思います。やっと描けるようになってきたから、自分の作品をどんどん増やしていきたいなあ。プロセスとかも好きだから、楽しんで描いていきたい。やっとこれからという感じだと思っているので、流れに乗って頑張っていきたいです。
__本日はお話ありがとうございました。
ありがとうございました!