1.卒業制作について
___堀くんの卒業制作について、どのようなものを作るのか教えてください。
院試に出した作品をパワーアップしたものを作ろうと思っています。院試の作品は虹で「∞(無限大)」の形を作っていて、「虹の無限大」というタイトルです。
小学校の体験を基にしていて、クラス目標で「誰とでも仲良くできる」「ともだちいっぱい」などの楽観的な理想主義に小学生ながら嘘くさいな、無理だろうな、と違和感を持っていました。
しかし、自分が理想の社会や状態を考えた時に、意外とここに帰結してしまい「みんな仲良くなったらええのに」と、昔は疑念を持っていたものに、何かしらの希望を抱いてしまう矛盾に気づいたのがきっかけです。
虹や無限大は実際には存在せず、それぞれ現象や記号であって創り出すことは無理です。それを楽観的な理想主義の象徴として扱い、それがよれっとしながらも自立しているという作品を作りました。
そして、テーマは一緒なんですがここから派生した大きいインスタレーションを東ピロティで展示したいと思っています。更に薄っぺらいポジティブなものをいっぱい作ろうと思っていて、青空・虹・お花や、できれば1クラス分の小学生用の机と椅子を用意して、虹が寄りかかってる作品の2点を作りたいなと思っています。
___メビウスの輪のような、急に俗っぽく感じますね。あえて無限大と言ってるのですか?
実は∞(無限大)はUVERworldのヴォーカルTAKUYA∞が気になって無限大の記号で何かしたいと思ったことがきっかけですね。もともと好きじゃ無かったんですけど、こんなメンタリティじゃないとやってられないときもあるよなと感じました。世の中に受け入れられるのってこういったメンタリティなのかなって、そこに対する批判性もあるけど許せちゃうっていうか。疑念を持ちながら信じてる部分がある。矛盾を孕んだ作品にしたいなと思い構想を練っています。
2.油画専攻について
___油画専攻のことについてお聞きしたいんですが、それぞれのゼミについて教えてください。
全部で3つのゼミがあって、先生が違うっていうくらいの認識です。本当はどこのゼミで何をやっていても別にいいんですが・・・
1ゼミは画材についてや絵を描く方法論が中心になってくるゼミです。2ゼミは作品の物語性、どう内容を作っていくかを考えていますね。僕が所属している3ゼミは現代美術寄りです。「絵画ベースにするけど、メディアアートとか彫刻とか他の表現手段との関係性を見ながら何か新しい絵画を作る。」とカリキュラムでは書かれています。
___市立芸術大学(※以下、京芸)の油画専攻の人って、油絵の具を使わなくなる人が多い
イメージですが、その他の素材に傾く人は多いですか?
僕も今そこが危うくなっているところで、自分の中ではペインティングが表現の中枢になっていて、筆と絵の具使って描くところにリアリティがある。単純に色や形とか好きで、自分で手 うごかして描くのも好きやし、それを使いたいなっていうのはあります。
けど、油絵の具は伝統がありすぎて、今の社会にあっていない気がする。今、スマホ・携帯越しに、写真も容量が軽いし薄っぺらいもので、厚みのないもので世界を認識していて、いろんなものの容量が軽い状態で、そういう中で油絵の具って重厚感をどうしても纏ってしまうから、上手い人は軽々使ってみせるけど、自分にはできないので今は休んでいます。
___立体作ってる方もいて、美術科の中で一番自由度が高いと感じます。
今まで「俺はペインターだぜ」みたいな感じでしたが、最近はもしかしたら映像や写真の方がいいのかもしれないし、あんまり今は表現方法に縛りをつけてないです。その都度にあったメディアに変えていってもいいのかなと感じます。
3.京芸の油画専攻を選んだ理由
___堀くんはなぜ京芸を受験したんですか?
もともと実家が京都で、大学の学費の関係で、国公立かな?という感じで京芸を選びました。
___特に、ここの油画専攻が良くて受験したというわけではないんですか?結果的に水があってそうなイメージですが。
大学にいる先生を知らず、何の知識もなかったのですが、先生方も関西で一時代を築いた重鎮達が多くて。超えたいなっていうか、倒したいなって思いました。
___油画専攻を選んだ理由は何ですか?
彫刻や日本画も考えてた時もありました。絵が好きで手を動かしながら作りたい。でも、日本画のように、息を止めて線を引くような仕事はぼくは雑なので合わないと思いました。最初に油画を選択してから肌にあったのでその後もずっと油画を選択しました。(美術科は1回生の後期、2回生の前期・後期と三回専攻を選択できます。)
4.制作展について
___去年から、京都市美術館ではなく学内で展示になって、どうでしたか?
京都市美の時は来場者はたくさん来ていただけるんですが、古い美術館なので絵は釣り展示じゃないとダメなど規制が多かったです。立体作品でも大陳列室に構想設計や彫刻がまとめられていたりして、展示する場所としてあまり良くなかったかなと思っています。学内展になってからは、やろうと思えば野外やアトリエ棟の空いているスペースに展示できるし、自由度が高いと思います。今は専攻ごとに場所が決められているけど、もっと緩くなっていろんな場所でいろんなことをやっている芸術祭みたいな状態になったら面白いかなと思いました。
___今回の卒業制作で、展示場所に東ピロティを選んだのはなぜですか?
制作室でやると壁の面積の制限が決められるし、かつ、同学年でまとめられるので、何のコンセプトもない制作展みたいになってしまうので。去年の進級制作では、展示場所に体育館を選んだんですが、1人だけの空間にできてすごくよかったです。
5.普段の制作について
___制作するとき気をつけていることってありますか?
気をつけていることより悩んでいることが多いです。今まで見たことないものを作りたくて小さく表現として留まるだけでなくやりきっている感じにしたいんですが、僕の脳が普通の作りをしているので月並みな発想で止まってしまいます。ドローイングとかして、アイデアが降って来るのをずっと待っています。
___結構頭で考える方?それとも手を動かして考える方ですか?
前は手を動かしていたけど、今は半々くらいです。学校ではドローイングとかして、散歩をよく
するから歩き回りながら考えてるかな。落ちているものや風景を写真にストックしてて何になるかわからないけど、自分が実際に目で見て体験したものを描きたいです。
6.レゴのこと/制作のお供
___このレゴで紙を揺らしている作品が不思議なのですが、どういった意図なんでしょうか?
国立西洋美術館でジャクソンポロックを観たとき、ポロックの絵ってヨーロッパ主体の美術の
権威性とか地位みたいなのに対する批判を行うアーティストなのに立派な額縁がついてて「ダッサイ。ダッセー」って思って・・・出来るだけ額縁っていうのをdisろうと思って。レゴで揺らしました。
___最後に、制作するときのお供ってありますか?
タバコかな、タバコしかないわ(笑)ラジオもつけてます、時間の経過を忘れてしまうので、ラジオをつけてると何時とかわかるので。流行りの曲が、1時間のうちに何回も流されてる感じと
か、なんかいいなと思って。もう聞いたわこれ(笑)みたいな感じで。
___本日はお話ありがとうございました。
ありがとうございました。